メルセデスの番組「Nu Silver Arrows」第10回の公式カバー。左からアンソニー・デビッドソン、ブラッドリー・ロード、シモーネ・レスタの実写ポートレートを組み合わせた画像

メルセデスは10月16日に公開した「Nu Silver Arrows」第10回で、シンガポールGPにおける新旧マシン仕様の比較を振り返った。副チーム代表のブラッドリー・ロードと副テクニカルディレクターのシモーネ・レスタは、アップデート後の挙動を早期に把握する必要がある一方、コストキャップと使用可能な部品数にも制約されたと説明した。アントネッリがFP1だけで使用した新フロントウイングは、当時1基しか用意できていなかった。

新旧仕様を同時に走らせる

番組内容を伝えたMotorsport.comによると、ロードは、シンガポールでラッセルを以前の仕様に戻すことで、手元に残っていた旧部品を使い、実際のサーキットで効率よく新旧比較ができたと述べた。マレーシアのセパンで開催されたバーレーンGPでは、アップデートパッケージの一部の挙動が、風洞やシミュレーターでの想定と完全には一致せず、さらに検証する必要があったという。

レスタは、セパンの路面、気温、天候変化、タイヤ摩耗の条件には独自性があり、1戦の観察結果をそのままほかのサーキットに当てはめられないと指摘した。チームは、より理想的なテスト機会を待たず、次のシンガポールGPですぐに比較を実施し、パッケージの評価に必要な情報を早期に得ようとした。ラッセルは自らこのテストを引き受ける意向を示した。

ダウンフォースは増えたが、分布とバランスへの適応が必要に

レスタによれば、アップデートによるダウンフォースの増加は実測できたものの、その効果はマシン各部に均等に現れず、フロントが想定以上に強くなった。したがって問題は、ダウンフォースが増えたかどうかだけでなく、前後バランスの変化を受けて、どの作動領域でマシンを走らせるべきかにも及んでいた。

シンガポールはスプリント開催の週末で、限られた練習と比較を終えると、すぐにスプリントと予選へ移るため、調整や学習の時間が圧縮される。レスタは、週末全体は長くても、実際にテストと経験の蓄積に使える周回数は限られると考えている。これもチームがデータ収集をできるだけ急いだ理由だった。

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新フロントウイングは1基のみ、テストの価値とレースのリスクを区別

アントネッリはFP1で新フロントウイングをテストした後、旧仕様に戻した。レスタによると、チームは新旧ウイングを比較してデータを持ち帰り、次戦に向けて分析することを望んでおり、シンガポールで新ウイングをレースまで使う計画はなかった。

ロードは、この新ウイングは当時1基だけで、生産を急いで現地に届けたものだったと補足した。予選、スプリント、決勝で破損し、同じ仕様のスペアがなければ、ピットレーンスタートのリスクが生じる。そのため、FP1でデータを得る判断には賛成したが、その後の競技で使い続ける選択はしなかった。

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2つの判断は、それぞれ別の問題に対応している。ラッセルに旧仕様を使わせたのは、既存部品で比較基準を設け、アップデート後の挙動の違いを見極めるためだった。新ウイングの使用をFP1に限ったのは、比較データを得ると同時に、その後の競技での部品リスクを許容範囲に抑えるためだった。旧仕様にもテスト上の価値が残り、新部品もスペア不足から実戦投入を見送る場合がある。

ダウンフォースの総量と分布も、分けて考える必要がある。レスタの説明では空力荷重の増加は測定できたが、フロントの強化が想定を上回り、チームはマシンの作動領域を改めて整えなければならない。アップデートでダウンフォースが増えたかだけでは、ドライバーに適応が必要な理由や、チームが比較を続ける理由を説明できない。

まとめ

メルセデスがシンガポールで2台に異なる仕様を使い、FP1で新フロントウイングを試した目的は、いずれも今後のレースに向けて比較可能なデータを蓄積することだった。ロードはオースティンで2台とも更新仕様と新ウイングを使い、その潜在力をより引き出すことを期待している。これはチームの準備方針と期待であり、実際の効果は今後のサーキットでの走りによって明らかになる。