マンチェスター・ユナイテッドは9月23日、2026年6月30日までの通期未監査決算を公表した。売上高は6.776億ポンドで過去最高を記録し、営業損益は赤字から2260万ポンドの黒字に転換したが、純損失は前年の3300万ポンドから4300万ポンドへ拡大した。営業成績の改善と最終赤字の拡大が同時に生じた主な理由は、財務費用の変化にある。
収益構成と営業利益
通期売上高は1110万ポンド、率にして1.7%増加した。内訳は放映権収入が2.068億ポンドで前年比3390万ポンド増、商業収入が3.173億ポンド、マッチデー収入が1.535億ポンドで、後者二つはそれぞれ1600万ポンド、680万ポンド減少した。放映権収入の増加が他の二部門の減少を補い、総売上高を過去最高へ押し上げた。
クラブは放映権収入の改善について、主に男子チームのプレミアリーグ順位が15位から3位に上がったためと説明した。一方、男子チームが欧州大会に出場しなかったことで、増収の一部が相殺された。マッチデー収入にはホームゲームが10試合減ったことが影響し、商業収入の減少には前のトレーニングウェア・スポンサー契約の終了が関係している。三部門はそれぞれ成績、試合数、契約サイクルの影響を受けた。
通期の営業費用は3180万ポンド減の7.019億ポンドとなった。従業員給付費用とその他の営業費用はいずれも減少したが、選手登録権の償却費は2.118億ポンドへ増加した。償却とは、関連する支出を複数の期間に分けて費用に計上する処理だ。損益計算書には4690万ポンドの無形資産処分益も計上されており、2260万ポンドの営業利益には事業の収支と資産処分の両方が影響している。
財務費用、キャッシュフローと翌会計年度の計画
純財務費用は2120万ポンドから6960万ポンドへ、4840万ポンド増加した。決算が主な要因として挙げたのは、為替ヘッジをしていない米ドル建て借入金の為替差損益の変動だ。前年の2290万ポンドの未実現利益から、当年度は1000万ポンドの未実現損失に転じた。営業利益から純財務費用を差し引き、400万ポンドの税額控除を加えると、純損失は約4300万ポンドとなる。

キャッシュフローを見ると、通期の営業活動による純流入は1.787億ポンド、投資活動による純流出は2.296億ポンドだった。財務活動と為替変動を含めると、現金及び現金同等物は1890万ポンド減少した。投資支出には6350万ポンドのスタジアム用地取得費が含まれる。クラブは関連用地を取得済みだが、10万人収容の新スタジアムはまだ建設計画の段階にある。
マンチェスター・ユナイテッドは、調整後EBITDAが2.164億ポンドだったことも公表した。この指標は財務費用、税金、減価償却費・償却費、無形資産処分益、特別項目を除外し、営業成績の比較に用いられる。2027会計年度の売上高見通しは7.4億〜7.6億ポンド、調整後EBITDA見通しは2.05億〜2.25億ポンド。チャンピオンズリーグへの復帰と、それに伴う選手・従業員関連費用の増加を織り込んだ経営陣の予想である。
主な財務指標(未監査)
| 指標(百万ポンド) | 2026会計年度 | 2025会計年度 |
|---|---|---|
| 商業収入 | 317.3 | 333.3 |
| 放映権収入 | 206.8 | 172.9 |
| マッチデー収入 | 153.5 | 160.3 |
| 総売上高 | 677.6 | 666.5 |
| 営業利益/損失 | 22.6 | -18.4 |
| 純損失 | 43.0 | 33.0 |
INKA SPORTS分析:営業黒字に転換しても、純損失が拡大した理由
営業損益は前年から約4100万ポンド改善したが、純財務費用が約4840万ポンド増え、税額控除も約260万ポンド減ったため、営業面の改善が相殺された。ここでいう財務費用は、現金で支払う利息より広い範囲を含む。キャッシュフロー計算書に記載された実際の支払利息は、前年から約165万ポンドの増加にとどまる。帳簿上の為替差損益が利益から損失へ転じたことで、純利益は現金支払利息の増加分を超える圧力を受けた。
翌会計年度の見通しにも、売上高と営業収益力の違いが表れている。売上高予想は当年度を大きく上回る一方、調整後EBITDAの予想レンジには当年度の水準も含まれている。クラブはチャンピオンズリーグによる増収機会と、それに伴う人件費の増加をともに予想へ織り込んだ。試合収入が増えても、費用を差し引いて初めて利益となり、営業活動で得た現金はチーム編成やインフラへの投資も支えなければならない。チャンピオンズリーグ復帰は成長の機会であると同時に、相応の支出も伴う。
まとめ
この決算が示すのは、営業面の改善、財務費用の圧力、投資需要が併存する状況だ。放映権収入の増加と費用管理はすでに効果を上げているが、為替や資金調達に関わる要因は引き続き最終損失を左右している。今後はチャンピオンズリーグ収入の増加がどれだけ営業利益として残るか、また監査終了後の正式な数値を確認する必要がある。売上高が過去最高になっただけでは、財務全体が黒字化したとはいえない。