国際自動車連盟(FIA)が10月19日に公表した2027年F1運営規則の初版には、F1活動と非F1活動の間の物理的空間と情報技術の分離要件が追加された。この内容は世界モータースポーツ評議会が承認済み。新規則は誰がどの事務所で働くかだけでなく、技術資料へのアクセス、人員異動、関連コストも対象とする。ただし施設共有や一部職種の例外も列挙され、グループ全体の完全分割を要求するものとは解釈できない。
技術作業区域と資料を分離、一部施設は共用可能
F6条は制限対象F1要員、制限対象非F1要員、非制限要員を区別する。前二者は原則として互いの作業区域へ立ち入れず、相手が生成した情報技術上の成果にもアクセスできない。成果は文書に限らず、計算、研究、シミュレーション、データ、分析、ノウハウ、知的財産も含む。FIAは施設の現地検査と情報技術のフォレンジック監査を実施できる。
風洞、ドライバー・イン・ザ・ループ・シミュレーター、ダイナモ、試験装置、データセンター、会議室は、定められた主目的で使用し、二種類の制限対象要員が同時に使用しないことを条件に、制限付き共用区域として交互に使える。F1の使用時間はF1制限区域として管理され、逆の場合も同様となる。二つの技術者集団が同室でプロジェクトを進めることとは明確に異なる。
食堂、通路、製造・組立、倉庫・物流など、規定された用途で使う区域も例外で、すべての要員が同時に使用できる。規則はCEO、チーム代表、CIO、取締役と、マーケティング、人事、財務、法務、製造、物流、ITサポートなどの列挙された業務だけに従事する人員を非制限要員と定める。ただし、これらの人員や第三者も技術分離を迂回する仲介経路にはできない。
異動では権限変更が必要、コストと勤務期間にも制約
制限対象F1要員が制限対象非F1職へ移る場合、新契約とメールアドレス変更を含む新しい権限が必要で、異動前の一営業日の終了までに旧権限を取り消す。その後、最低連続12カ月は条文が認める非F1活動だけに従事できる。財務規則の相互参照条項が定める例外を除き、異動のあった財務報告期間全体の報酬は引き続きF1チームの関連コストに算入する。部署を変えただけで直ちにF1の会計から外せるわけではない。

逆にF1へ異動する場合も条件がある。異動前の最低連続3カ月はF1・非F1の活動に従事できず、制限対象システムや、両種類の制限対象要員が生成した成果へアクセスできない。異動後の最低連続12カ月は、規定されたF1、パワーユニット供給、カスタマーチーム支援、FIAプロジェクトなどの活動だけに従事できる。新契約、権限変更、関連コストの要件も適用され、権限の取消・作成ログは直近3年分を継続保存する。
資料の移転も双方向に自由ではない。F6は、非F1用途に厳密に必要な場合、指定責任者が申請・承認し、書面の監査記録を残すことを条件に、F1制限対象要員の成果を非F1制限対象要員へ一方向に渡すことを認める。その成果を説明する議論は内容と形式が制限され、ビデオ会議で録画・文字起こしする必要がある。非F1制限対象要員の成果をF1制限対象要員へ逆方向に共有することはできない。
INKA SPORTS 分析:分離の中心は成果と人員の流れ
これらの条項は、混同しやすい二つの共有を分ける。一つは高価な設備の利用、もう一つは別プロジェクトの研究開発成果の取得だ。風洞を時間で分けて共用できても、技術資料の共用が自動的に認められるわけではない。製造や物流などの職種の例外も、制限対象の成果へのアクセス制御を代替しない。適法性を判断する鍵は会社名や所在地だけでなく、具体的な要員、権限、使用時間、成果の流れが条文に合うかである。
異動の制限は短期的な人員循環をさらに縛る。外部への異動後最低12カ月の勤務範囲制限と、当該報告期間の報酬を原則F1コストに残す要件を組み合わせることで、組織上の所属だけを変えて人件費を直ちに移す余地を減らす。内部へ移る前の3カ月の隔離は、非F1技術者がF1に入る独立した条件となる。これは規則の構造が示す制約であり、特定チームの過去の違反を証明せず、各チームの支出増額を算出する根拠にもならない。
総括
2027年の要件は、制限対象の技術活動を分離し、必要な共有と異動に検証可能な境界を残すことだ。チームは規定の範囲で施設や支援機能を共有できるが、その利便性で技術成果を自由に往復させることはできない。実施時にはF6の人員定義、共用区域の条件、承認記録、コスト条項を個別に照合すべきで、「グループ内協力の全面禁止」とは要約できない。