アウディは10月28日、トーマス・フールが11月1日付でアウディ・フォーミュラ・レーシング(略称AFR)の最高経営責任者(CEO)に就任すると発表した。同社はドイツのノイブルク・アン・デア・ドナウに拠点を置き、アウディF1プロジェクトのパワーユニット開発と製造を担当する。今回の任命はパワーユニット会社の経営体制に関するもので、組織を強化し、技術責任者が開発にさらに集中できるようにすることが主眼となる。
経営、技術、運営はそれぞれ誰が担うのか
アウディの発表によると、最高技術責任者(CTO)のシュテファン・ドライヤーはF1パワーユニットの技術開発の指揮に専念する。最高執行責任者(COO)のクリスチャン・フォイヤーは、引き続きノイブルク拠点の運営を担当する。フールの加入後は、3人がそれぞれ会社の統率、技術開発、運営管理を担う。ドライヤーとフォイヤーは各自の専門領域を引き続き担当し、今回の発表に示された役割分担を構成する。
フールは国際的なエンジニアリングと経営の分野で30年以上の経験を持つ。2009年から2012年までメルセデスAMGハイパフォーマンス・パワートレインズのマネージングディレクターを務め、その後はグローエやLIXILで上級管理職を歴任。直近ではジョージフィッシャーのビルディング・フロー・ソリューションズ部門のCTOを務めていた。アウディが紹介した経歴は研究開発、生産、業務実績、技術革新に及び、今回の任命で重視された経験の範囲を示している。
AFRとグランプリに参戦するチームは、組織上の異なる単位だ。アウディは同じ発表で、マッティア・ビノットを引き続きアウディF1参戦チームのCEO兼チーム代表と記している。ビノットは、ノイブルクがアウディ初のF1パワーユニットをゼロから開発したとし、フールがチームと組織をさらに発展させることに期待を示した。したがって、フールはパワーユニット会社を率いることになり、ビノットは参戦チームのCEO兼代表を務める。2人の役職は異なる事業体に対応している。

すでに稼働している開発拠点
アウディのプロジェクト資料によると、AFRはF1計画のために2022年に設立され、ノイブルク拠点はスイスのヒンウィル側と協力してパワートレインを開発・製造している。既存施設は近代化と拡張が行われ、約3000平方メートルの新たな建物に専門の作業場や研究室を設置。エンジンと部品用のテストベンチも20基を超える。フールは、パワーユニットの開発、製造、サーキットでの運用支援をすでに進めている組織を引き継ぐ。
INKA SPORTS 分析:組織の役割分担は技術開発にどうつながるか
今回の調整で最も明確な変化は、新たに加わるCEOが組織を率い、CTOが技術方針と開発に集中することだ。パワーユニットは開発から試験、製造に至るまで、複数チームの継続的な連携が必要になる。組織づくりを新CEOに委ね、技術と運営の責任者を維持するアウディの体制は、両面を並行して進める意図を示している。フールも声明で、組織内の専門能力を結集し、高い水準で競うための条件を整えることを目標に挙げた。
別のF1パワーユニットメーカーで経営職を務めた経験は、フールが関連分野の知見を持つことを示す。ただし、過去の経歴だけで、アウディが直ちに出力や信頼性を向上させると証明できるわけではない。今回の調整の実際の効果を判断するには、今後の開発計画の実行と、コース上でのパワーユニットの性能を見る必要がある。ある1戦の順位変動だけで、その変化を1人の経営者に帰することもできない。
まとめ:まず職責を明確にし、技術的成果を見守る
フールが11月1日に就任した後も、AFRの組織統率、技術開発、拠点運営は、明確な役職ごとに担われる。現時点で確認できるのは、アウディがパワーユニット会社の経営体制を強化したことだ。この体制が、より効率的な開発や安定した実走につながるかは、今後の技術的進展で検証する必要がある。参戦チームとパワーユニット会社の職責の違いが、今回の任命を理解する鍵となる。